麻生太郎氏『とてつもない日本』を読む(1)


シリコンバレーの話題とは直接関係はないかもしれないが、麻生太郎氏の『とてつもない日本』を取りあげてみよう。

とてつもない日本 (新潮新書)

とてつもない日本 (新潮新書)

 新潮新書の217として2007年6月10日発行となっており、その帯には

日本の底力はまだまだ凄い

すべての日本人に自信を与える快著!

とあり、裏表紙の帯には

祖父・吉田茂は、私が幼い頃、よくこんなふうに語っていた。
「日本のエネルギーはとてつもないものだ。日本はこれから必ずよくなる。日本はとてつもない国なのだ」――。
わたしはいま、その言葉を思い出している。

と記されている。

 首相をめざす政治家があるいはそうでないように見える政治家も、国民に向かって本という形で語りかけることが多くなってきた。本書もその一つとして考えることができよう。

 しゃべり方がべらんめ調で知られる麻生氏だが、この本もざっくばらんにとっつきやすい形で書かれている。麻生氏のホームページで掲載したものをベースにして書かれたとのことである。


 まず興味深いエピソードが、本書の「はじめに」で紹介されている。麻生外務大臣がインドを訪問した際のことで、日本のODAを使って建設されたインドの地下鉄視察が日程にくまれていた。地下鉄の駅には「この建設費の70%が日本の援助である」と分かるようにグラフで表示されていたので、麻生氏はインド地下鉄公団の総裁に御礼の言葉を述べると、逆にその総裁から次のように感謝されたというのである。

われわれがこのプロジェクトを通じて日本から得たものは、資金援助や技術援助だけではない。むしろ最も影響を受けたのは、働くことについての価値観、労働の美徳だ。労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された。日本の文化そのものが最大のプレゼントだった。今インドでこの地下鉄を「ベスト・アンバサダー(最高の大使)」と呼んでいる―――。(p.11.)


 「日本の底力」を感じさせ、日本人に勇気を与える前向きの姿勢が貫かれた本書は、このポジティブ姿勢という点で、前に取りあげた原丈人氏と共通するものを感じ取ることができる。(つづく)